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【書評】コンビニ人間【あらすじ・感想】芥川賞受賞作品

【書評】芥川賞受賞作の「コンビニ人間」のあらすじ・感想を紹介

第155回芥川賞受賞作品、村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を読んだので、紹介したいと思います
結論からいうと、かなりオススメ。
僕自身、今まで読んだ小説の中でも、五指に入る面白い小説でした。

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こんな人におすすめ

  • 芥川賞受賞作品をよみたい。
  • サックと読める小説が読みたい。
  • でも、中身の濃い小説が読みたい。
  • 「普通」でなくてはならない、周りと同じでなければならない、という圧力を感じることがある。
  • 自分は「普通」の人間だとおもう。
  • おすすめ度

評価 :5/5。

あらすじ

「奇妙な子供」

コンビニ店員として、生まれる、、、、前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思いだせない。

「コンビニ人間」本文中より

古倉恵子は、36歳、独身。職歴は、コンビニのアルバイト一筋、18年。
そんな古倉さんは、郊外の住宅地で、普通の家に生まれ、普通に愛されて育ちました。
しかし、古倉さんは、周囲の人から、「奇妙な子供」と思われながら、育ってきました。

これは、古倉さんが幼稚園児の頃のこと。
ある日、公園で、小鳥が死んでいるのを見つけた、古倉さんたち。
死んだ小鳥を見て、古倉さん以外の子どもたちは泣いています。
古倉さんの母親も、
「お墓を作ってあげよう」

といいますが、古倉さんは、

「お父さん、焼き鳥好きだから、今日、これを焼いて食べよう」
と、提案します。
我が娘のまさかの提案に驚く母親。必死にお墓に埋めてあげようと説得します。
しかし、古倉さんには、なぜ、母親が小鳥をお墓に埋めようと言うのか、理解できません。

「なんで?せっかく死んでいるのに」

周りの友達は、可愛そうにと、小鳥のお墓をつくって、花を供えてあげます。

小鳥は、「立入禁止」と書かれた柵の中に穴を掘って埋められ、誰かがゴミ箱から拾ってきたアイスの棒が土の上に刺されて、花の死体が大量に供えられた。
「ほら、ね、恵子、悲しいね、かわいそうだね」と母は何度も私に言い聞かせるように囁いたが、私は少しもそうは思わなっかった。

「コンビニ人間」本文中より

また、こんな事もありました。

体育の時間、男子がとっくみあいのケンカをしていました。
「誰か止めて!」
悲鳴があがります。
そっか、止めればいいのね、と古倉さんは、用具室にあったスコップを持ち出し、ケンカをしていた男の子の頭を殴りつけます。
動きの止まった男子をみて、さあ、もう一人も、とスコップを振り上げたところで、先生に制止されました。

こんな事ばかり繰り返す古倉さんは、すっかり問題児に。
古倉さんが、何か問題を起こすたびに、学校に呼び出され、方々に謝罪してまわる両親。
どうやら自分が何か、悪いことをしてるのであろうことは、何となく分かるのですが、一体、何がどう、問題なのか、分からない古倉さん。
そんな古倉さんを、両親も妹も、家族は愛して、可愛がってくれます。
古倉さんとしても、自分を可愛がってくれる家族を困らせることは、本望ではありません。

古倉さんは、家族を困らせないために、自ら動くことを、一切やめました。

そんな古倉さんを見て、はじめのうちは、皆、安心したようでした。
しかし、高学年になるにつれ、あまりにも静かな古倉さんは、それはそれで、問題になりました。
それでも、古倉さんは、家族を困らせないため、一切、自ら動こうとはしないのでした。
そんな古倉さんを心配しながらも、家族は、愛してくれます。

家族は私を大切に、愛してくれていて、だからこそ、いつも私のことを心配していた。

「どうすれば『治る』のかしらね」

母と父が相談しているのを聞き、自分は何かを修正しなければならないのだなあ、と思ったのを覚えている。

「コンビニ人間」本文中より

休み時間は一人で過ごし、プライベートな会話はほとんどせず、何とか問題なく中学、高校と過ごした古倉さんは、大学生になっていました。

そして、とうとう古倉さんは、運命の出会いをすることになるのです。

古倉さん、コンビニと出会う

大学一年生になった古倉さんは、ある日、オープニングスタッフを募集しているコンビニを見つけます。
求人に募集し、無事、採用された古倉さん。コンビニでの研修が始まります。

コンビニでの研修では、全てにマニュアルがありました。
「挨拶」の練習ひとつとっても笑顔の作り方、声の出し方、姿勢の作り方と、細かい手本やマニュアルがあります。

大学生、バンドをやっている男の子、フリーター、主婦、夜学の高校生、色々な人が、同じ制服を着て、均一な「店員」という生き物に作り直されていくのが面白かった。その日の研修が終わると、皆、制服を脱いで、元の状態に戻った。他の生き物に着替えているようにも感じられた。

「コンビニ人間」本文中より

コンビニでの研修は、色々な人間を、マニュアルにしたがって、均一な「店員」という生き物にしていく作業でした。
これまで生きてきた社会では、古倉さんはどう振る舞えば正しいのかが分かりませんでした。
しかし、コンビニでは、マニュアルに書かれているとおりにすればよいのです。
笑顔一つにしても、見本のポスターがあり、口角の上げ方まで示されます。
行動も、喋るべき言葉もマニュアルで示され、マニュアルに書かれていない事も、社員の真似をすればよいのです。
コンビニのオープンの日、初めての接客。古倉さんはマニュアル通り接客をこなし、お客様との会話も社員の真似をして、見事、乗り切ります。そんな古倉さんを、研修の担当者の社員は、称賛してくれました。

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。

「コンビニ人間」本文中より

古倉さんが、コンビニの店員として生まれた瞬間でした。

普通になれない古倉さん

コンビニでのアルバイトが決まって、家族は喜んでくれました。
しかし、いつまでも就職せず、執拗に同じコンビニでアルバイトを続ける古倉さんを、また、家族は心配しだします。それでも、相変わらず、優しく見守ってくれる両親に申し訳がなく、就職を試みる古倉さんですが、うまくいきません。
完璧なマニュアルがあって、「店員」になることはできても、マニュアルのない世界では、どうすれば「普通」の人間になれるのか、全く、分かりません。
しかし、コンビニでの仕事は、相変わらず、完璧にこなす古倉さん。コンビニは彼女の全てであり、彼女の全ては、コンビニのためにあるでした。
コンビニの水を飲み、コンビニの食べ物を食べ、コンビニのための情報を収集する。
そんな生活を18年間、続けているのです。
コンビニが休みの日には、たまに学生の頃の友達と会うこともあります。
しかし、36歳で独身、恋人もおらず、就職をしたこともない古倉さんは、友達ともうまく話を合わせることはできません。
なぜ、恋人がいないのか、なぜ、ずっとアルバイトなのかと聞かれても、うまく応えることができないのです。
そんな時は、予め妹が用意しておいてくれた言い訳を答えるようにしています。

「うーん、いい感じになったことはあるけど、私って見る目がないんだよねー」と曖昧に答えて、付き合った経験はないものの、不倫かなにかの事情がある恋愛経験はあって、肉体関係を持ったこともちゃんとありそうな雰囲気で返事をしたほうがいいと、以前妹が教えてくれていたのだった。「プライベートな質問は、ぼやかして答えれば、向こうが勝手に解釈してくれるから」と言われていたのに、失敗したな、と思う。

「コンビニ人間」本文中より

子供の頃スコップで男子生徒を殴ったときも、「きっと家に問題があるんだ」と根拠のない憶測で家族を責める大人ばかりだった。私が被虐待児だとしたら理由が理解てきて安心するから、そうに違いない、さっさとそれを認めろ、と言わんばかりだった。

「コンビニ人間」本文中より

古倉さんは、そんな周りの人間を迷惑に思いながら、適当に話を合わせます。
でも、そんな時も古倉さんの心は、コンビニを思っていました。

白羽さん、現わる

古倉さんの働いているコンビニに、ある日、白羽さんという男性が入ってきます。
ところが、この白羽さんという男が、なかなかの問題児だったのです。
まず、自分もコンビニで働いているにも関わらず、コンビニで働いている人を見下し、馬鹿にしています。しかし、自分は、全く仕事ができません。
注意をすれば、言い訳ばかり。店長や、他の従業員からの評判も最悪です。

仕事中に携帯電話を持ち込み、防犯カメラで見ていた店長に注意されます。
古倉さんは、基本的なルールも守れない白羽さんに驚きます。
白羽さんは、そんな古倉さんに、延々と店長やコンビニの愚痴をこぼしつづけます。

白羽さんは、なぜ、コンビニで働いているのだろう?

疑問に思った古倉さんは、白羽さんに尋ねます。

「婚活ですよ。」

あまりにも想定外の答えに、驚く古倉さん。
そんな白羽さんですが、ある日、店に行くと、白羽さんのシフトがすべて消されていました。
不思議に思った古倉さんが尋ねると、なんと白羽さん、店のお客さんに、ストーカー行為を働こうとしたところをみつかり、クビになっていたのでした。
どうやら、白羽さん、従業員の女の子の連絡先を勝手に見ては、電話をしたり、帰り際に待ち伏せしたり、挙げ句の果てに、既婚者の従業員にまで、声をかけていたようです。
それでも「婚活」がうまくいかなかった白羽さんは、とうとう、お客さんにまで、手を出そうとしたようでした。
白羽さんが働いていた頃は、白羽さんに対する不満から、どことなくギスギスしていたお店でしたが、
白羽さんが辞めたことで、店員のみんなも、安心したようで、店内も落ち着いた雰囲気をとりもどしていました。
古倉さんは、やっぱり、「異物」は排除されるんだな、と思う同時に、私が「異物」になった時も、きっと排除されるんだろうなと、思うのでした。

そんなある日、店をクビになったはずの、白羽さんを店の近くで見つけた古倉さん。
どうやら、コリもせず、お客さんにストーカー行為を働こうとしているようです。

古倉さんは、白羽さんに声をかけます。

「待ち伏せですか?お客様に対する迷惑行為は、店員の禁忌中の禁忌ですよ」
「僕はもうコンビニ店員じゃない」
「私が店員として見過ごすことはできません。店長にも厳重注意されましたよね?今、店にいるんで、呼んできますよ」

「コンビニ人間」本文中より

見咎める古倉さんに対して、強気な態度で自分の行為を正当化しようとする、白羽さん。
しかし、古倉さんにことごとく、正論で言い返されてしまいます。
両手で顔を覆う白羽さん。指の間から、涙がこぼれ落ちます。
なんと白羽さん、泣き出してしまいました。

ひとまず、白羽さんを近所のファミレスに連れて行く、古倉さん。
白羽さんに温かい飲み物を飲ませてあげます。

白羽さんは、如何に世界から自分が虐げられてきたか、如何に自分がつらい思いをしているかを、古倉さんん切々と語りだします。

「この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ」
〜中略〜
「皆が足並みを揃えていないと駄目なんだ。何で三十半ばなのにバイトなのか。何で一回も恋愛をしたことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。『ああ、風俗は数に入れないでくださいね』なんてことまで、笑いながら言うんだ、あいつらは!誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派というだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」

「コンビニ人間」本文中より

自分の苦しみの比喩として、簡単に「強姦」などという言葉を使う白羽さん。
ストーカーまがいの行為で、女性店員や、女性客に性犯罪者手前の行為をしていながら、被害者意識ばかりが強く、加害者意識はないのだな、と古倉さんは思います。

白羽さんは、結婚することで、虐げられることがなくなる、だから結婚したいんだ、といいます。
そのための「婚活」だったと。
白羽さんの理論はめちゃくちゃでしたが、「普通」の人間になるのには、どうすればいいのか分からず、虐げられてきたのは、古倉さんも同じでした。
古倉さんも、現状を何か、変えてみたいという思いは持っていたのです。
そんな、古倉さんは、白羽さんに、ある提案をします。

「白羽さん、婚姻だけが目的なら、私と婚姻届を出すのはどうですか?」

驚く、白羽さん。
何言ってるんだと、猛反発しますが…、

果たして、古倉さんと白羽さん、この先、どうなってしまうのか。
二人は結婚するのでしょうか。

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感想諸々

読みやすい芥川賞作品

まず、この本ですが、僕自身の感想としては、かなり、面白かったです。
後、かなり読みやすいな、と感じました。ページ数も文庫本で161ページと短めの作品なので、印象としてはサクッと読めた印象でした。
芥川賞を受賞した作品を何作か読んだことがあるのですが、「読みやすいな」という印象を抱く作品は珍しいんじゃないかな、と思います。
かと言って、当然、内容が軽いとか、文章がポップな感じ、とかと言うわけでも、ありません。
この作品は、主人公である古倉さんの視点で話が進行する、一人称視点の小説です。
古倉さん自身が、かなりぶっ飛んだ思考の持ち主なので、分かりやすく、共感しやすいというわけではありません。
にも関わらず、結構スッと入ってくるし、どんどん読めてしまうので、それはこの作品の特徴ではないかなと思います。

古倉さんは合理主義者

僕は、古倉さんは、超がつくほどの合理主義者なんじゃないかなと、思います。
この作品が読みやすいというのも、古倉さんの理路整然とした語り口が理由ではないかとも思ったり。
理論自体は、結構、めちゃくちゃだったりするんですけどね。
古倉さんは、合理主義的あり、一貫した考えの持ち主です。
コンビニに対する考え方なんかは、特にそうだと思います。
必要とあらば、手段を選ばずやり通すことができ、また、彼女にとってはそれが当たり前なのです。

古倉さんが奇妙がられる、普通でないと言われる所以も、この突き抜けた合理主義のせいだと思います。
小鳥の死骸を焼き鳥にしようとしたり、喧嘩する男の子の頭を殴って止めるのも、ぶっ飛んではいますが、目的を果たすための手段と考えると、合理的ではあります。
ですが、人間には感情があります。そして、感情の部分というのは、得てして合理的ではないのです。
人間の不合理な部分が、「人間らしさ」と呼ばれたりするのではないかと思ったりするのです。

普通の人たち

この作品の中でも印象的なエピソードがあります。
古倉さんが、友人に誘われて、バーベキューに参加します。
そこには、友人や、その夫が十四、五人ほど参加者がいました。
結婚していないのは、古倉さんと、もう一人の友人だけです。しかし、その友人は、正社員として、バリバリと働いています。
それぞれが、近況報告をしていくなか、古倉さんの番になりました。

「私はコンビニでアルバイトしてる。身体が……」
いつも通り、妹の作ってくれた言い訳を続けようとすると、その前にエリが身を乗り出した。
「ああ、パート?結婚したんだねー!いつ?」
当然のようにエリが言うので、
「ううん、してないよ」

と答えた。

「あの、え、それなのにアルバイト?」

マミコが戸惑った声を出す。

「うん。ええとね、私は身体が…。」

「そうそう、恵子は身体が弱いんだよね。だからバイトで働いているんだよね」

私を庇うようにミホが言う。私の代わりに言い訳をしてくれたミホに感謝していると、ユリの旦那さんが、

「え、でも立ち仕事でしょ?身体弱いのに?」

と怪訝な声を出した。

彼とは初めて会うのに、そんなに身を乗り出して眉間に皺を寄せるほど、私の存在が疑問なんだろうか。

「ええと、他の仕事は経験がないので、体力的にも精神的にも、コンビニは楽なんです」

私の説明に、ユリの旦那さんは、まるで妖怪でも見るような顔で私をみた。

「え、ずっと…?いや、就職が難しくても、結婚くらいはしたほうがいいよ。今はさ、ほら、ネット婚活とかいろいろあるでしょ?」

「コンビニ人間」本文中より

ミホの旦那さんも、誰でもいいから相手を見つけたら?
友人たちも古倉さんにいい人を紹介してあげてよ、と話が盛り上がります。
早く婚活サイトに登録するように促される古倉さんですが、なぜこのままでは駄目なのかと、疑問に思います。

「今のままじゃ、だめってことですか?」と聞く古倉さんに、ミホの旦那さんは、「やべえ」と呟きます。
そんな状況に「あ、私、異物になってる」と思う古倉さんなのでした。

白羽さんの言う通り、確かに普通でない人は、少数派というだけで、その人生を強姦されているのかもしれません。
普通と言われる人は、こうやって、少数派の人を見つけては、その人達を「普通」ではないと、貶めることで、自分が「普通」の人間である、こちら側の人間であると確信を持ちたいのです。

古倉さんは、コンビニと違い、マニュアルがない「普通の人間」がどういったものか分からず、誰かに教えてほしいと思っています。「普通の人間」のマニュアルがあれば、普通になれるのにと。
それは、実は古倉さんだけではないのかもしれません。
みんな、マニュアルがない「普通の人間」であるため、注意深く周囲を見渡し、多数に従おうとします。

少数派の人間を見つけると、「ほら、ここに普通でない人間がいるぞ、私達とは違う普通でない人間が。」とあちら側に追いやろうとするのです。
そうすることで、自分がこちら側、つまり、「普通」であると証明しようしているのではないかな、とおもうのです。

「コンビニ人間」、みんなの感想

「コンビニ人間」のTwitterでのみんなの感想をいくつか紹介します。
どんな感想があるでしょうか。


おわりに

いかがだったでしょうか?
僕自身は、とても好きな作品で、読後感もとても良かったです。
ただ、読む人によっては、感想が別れる作品かもしれないな、と思いました。
実際に作中の古倉さんや白羽さんのように、虐げられる苦しみを味わっている人も少なくない、現代の世の中だと思います。
短めの作品ではあったのですが、自分自身、色々と考えさせらる作品でした。
村田沙耶香さんの作品は、今回が初めてだったので、他の作品も読んでみたいと思いました。

それでは、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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